少しだって冷たく出来ない存在。どうでもいいなんて思えない。
 

桜宮で呆れたように言われたことがある。


『お前は他人を標本(サンプル)としてしか見ていないな』と。


一歳年上の苦労性は、色んな大役をそれとなく引き受けてしまい(押し付けられてしまい)、てんてこ舞いになったところを見捨てられない友人たちに助けられていた(どう舞ったところで、蒼ならば大役だろうが何だろうが一人でもこなしてしまうのだが、押し付けたくせに協力する学友に恵まれていたのだった)。


ゆえか、人をよく見ている。



蒼の言った人物評価は、大概俺も同意するものだった。


唯一、自分の評価を覗いては。
 

しかしそれも高校生まで。その後は、蒼の評価の妥当性を感じていた。
 

たぶん本当に俺は、そういう見方しか出来ない。
 

愛着を持っていた者たちと例外の弟を除いては。


だから、相手が自分をどう思っていようが関係なかった。


冷たくして冷たくされても目にも入らない。


微笑めば微笑みが返ってくると、咲桜で初めて知った。


「はは、泣いてばっかだな」


「いーじゃないですか。りゅうやくんは泣いたことあるんですか?」
 

咲桜の声がぶすくれていた。


私は泣き面ばっかり見せて……と自責しているのが声に出ている。