色んな声を聞いて来た。私を否定する声がほとんどだった。


在義父さんの地位を追いやった素性のわからぬ女とその娘。


優しい声は、幼い頃は夜々さんやマナさんしかいなかった。


そんな私だから、自分から友達を作ることも出来なくて。


それでも、在義父さんと夜々さん、マナさんたちの愛情を、信じて来てよかった。


桃子母がくれた命と名前を、嫌いにならないでいて……よかった。


だって、流夜くんに名前を呼ばれるの、大すきだから。


『華取』から『咲桜』に呼び方が変わったとき、今までにないくらい心臓が跳ねた。


この人の口からその音が出るだけでドキドキした。


今も。……たぶんずっと、ドキドキ負けしていくんだろうなあ。


「あい、たかった……たぶん私、ずっと……りゅうやくんに、逢いたかった……」
 

一生の人とも思えるあなたに。


……自分から何かを欲することを、本能的に懲らしめていた。


何も所有してはいけない気がしていた。


何かを望んでは駄目だと思っていた。


でも、出逢った今、気づいたら心にはそんな声があった。


気づかないように、していたのだと思う。


でも、もうね、手を伸ばした近さにいるんだよ。


どれだけの幸せなの。


「ああ……。俺も、咲桜に逢いたかった……」