朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】



流夜の手から、ボックスから外された指輪が渡される。


両手で包むように眺めると、それを流夜くんが嬉しそうに見ている。


「――えっ、でも前にこれもらったばかりだよ?」
 

首元にはネックレスが煌めいている。


「まあそうなんだけど、これは……魔除け」


「魔除け⁉ どこかに梵字でも彫ってあるの⁉」
 

これって神具⁉ 違う違う、と流夜くんは苦笑した。正しくはムシ除けかもしれない、と呟きつつ、私の掌から指輪を取る。


「結婚を、咲桜に申し込んだ証拠、かな」


「………」
 

それって、いわゆる……


「婚約……?」


「指輪、かな」
 

流夜くんが悪戯気に笑う。婚約指輪。


またカーッと頬が熱くなった。ええと、ええと……。


「……はめて、くれますか?」