朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】



「だって遙音くんに逢ったら自然と号泣しちゃって」


「そうよね。笑満、お茶の準備してくるから、オトをリビングに通してあげてね」


「うんっ」
 

笑満ちゃんは嬉しそうに俺の手を引いた。
 

初めて入る、『今』の松生の家。
 

憲篤さんは言われた通り顔を洗いに行って、生満子さんはキッチンに向かった。


ソファに連れて来られて、ドキドキする心臓を必死に押さえていた。両手で。


「遙音くん、大丈夫? やっぱりいきなり過ぎた? お父さんが連れて来ちゃうしお母さんは呼びこんじゃうし……」


「あ、いやそうじゃなくて――もないんだけど」


「どっち?」


「その……動悸が激しいのは……笑満ちゃんの、……彼女の家族に、逢ってるから、だから」


「………」
 

しゅかああっと笑満ちゃんまで真赤になった。


「そ、そうだよね。ごめん、気づかなくて」


「いや。……反対、されるかもしんないけど、言ってもいい? 笑満ちゃんと付き合ってるって」


「反対はされないと思う。……話してくれる?」
 

心臓あたりを押さえていた手を解く。隣に座る笑満ちゃんの手に重ねる。


「ありがとう」