それは言うに、仕事で疲れるから傍にいてくれ、という意味だということは承知している。


私と主咲くんの不思議な調和。


お互いが傍にいると、それだけで受けた傷は癒える。


極度の疲れも和らいでいく。


……私が現場で受けた切り傷だって擦り傷だって、主咲くんが撫でるだけで消えていく。


――流夜兄さんもこれは知っているけど、その原理までは知らない。


本当を言うと、私も未だに半信半疑だ。この不思議の引力。
 

主咲くんの生家のことを、知らなければ。
 

私が主咲くんの手を握ると、それを待っていたように歩き出した。


「今日は誰もいないの?」


「ああ。今のとこは。呼んでもいない、が勝手に来るだろう、あいつらは」


「そうだね」
 

主咲くんは、大きな護るものがある。


年齢は私と同じでも、規模が違う。


対抗する意味ではないけど、だからこそ、私は私の仕事を貫く。


流夜兄さんと背中合わせに、主咲くんと隣り合わせに立った場所。


そこが私の、戦場。


主咲くんの傍らが、私の生きる場所。
 

……出来るだけ、この世界が永いことを願いながら、その傍に。