「流夜さんから連絡あった。さくのこと、呼んだって」


「あ――。うん」
 

連絡済みだったようだ。


主咲くんは変わらず無表情で私の髪を撫でる。


――主咲くんは、唯一私のことを「さく」と呼ぶ。


「――で。この怪我はどうした?」


「え?」
 

手が滑り落ち、人差し指を頬の真ん中に置いた。


「中、切っているだろう」
 

その指摘に、私は目線を逸らせた。


事実、口の中には新しい傷があった。


「うえ……えーと、その……ちょーっと、格闘しちゃったかなー? って……」


「また現場か」


「……はい」


「犯人相手にして歯を食いしばり過ぎて切ったか」


「……ごめんなさい。もうしません……」
 

しゅんとすると、今度は両手で頬を包んだ。


ぶに、とつねられる。