流夜兄さんの他人への冷酷さを知る身としては、あれほど溺愛出来る、優しくしたい甘やかしたい人とのことだから。
でれでれしまくっていた。
庵へは、その一つ手前に神社を通る必要がある。
階段を駆け上がると、大すきな春の香りを感じた。
「――主咲くん!」
神社の前にたたずんでいるのは、紺色の着流しに薄水色の羽織の男の子だった。
前髪の一房だけ、毛先に銀髪の混じった黒髪。鋭い黒曜(こくよう)の瞳。
腕を組んでいるその姿、放つ雰囲気は威圧的。
・・
「さく」
「ごめん! 遅くなって! いいの? 庵離れてて――」
主咲くんは腕を解き、駆け寄ってきた私の髪に触れた。



