斎月のことは言った通りに、あいつが中学を卒業して海外に出たらその存在だけは咲桜に教えるつもりでいた。


二人が邂逅することはないように。
 

……計らうつもりだったのに。


「………」


「目に見えて落ち込んでんなあ」


「うっさい」
 

咲桜を華取の家に送り届けて、降渡とは本署で合流した。


在義さんからの呼び出しの理由は、斎月のことが咲桜にばれた、と龍さんから連絡が行ったからだ。
 

本署の廊下、隣を歩く降渡はただのとばっちりなのだが、意気消沈する俺をからかいの目で見てくる。
 

本署は、俺たちが本拠地にする地域のトップなので、その中の人間も学生時代から俺らのことは周知だ。


軽く会釈してすれ違っていく。


無論、警察の人間でもないのに当然のようにここにいる俺たちは好奇の瞳は避けられない。


「斎月姫のこと、ほんとに言わないつもりだったのか?」