「ん? ああ。龍さん、本名は『猫柳龍生』なんだよ。ただ警察入って犯人にナメられたとかで、威厳がないって言って母方の旧姓の『二宮』名乗ってるだけ。戸籍上は『猫柳』なんだ」
 

猫柳龍生?


「それは知りませんでした」


「在義さんが龍さんの苗字呼ぶこともないしな」


確かに、『龍生』って呼んでるのしか知らないなあ。


「さて――」
 

流夜くんが仕切りなおすように目を閉じた。開いた瞳はどこか虚ろだった。


「流夜くん?」
 

呼びかけると、流夜くんは額の辺りで手を組んだ。続く声は沈んでいる。


「……在義さんに呼ばれた。本署行ってくる」