流夜くんを信じていないわけではない。


その言葉、違えられようとしているなんて焦りはない。


ただ――なんだかとても淋しくて。


あの女性が誰なのか、流夜くんにとってどんな存在なのか、気になり過ぎる。


そして、あれほど真面目な様子で話す相手……。


流夜くんの家族は、行方不明のお姉さん以外はいないという。


生後間もなく両親たちも亡くしているから、まさか物語の王道・妹なんてことはないはずだ。


親類縁者に頼れる人もなく龍生さんの祖父の許に引き取られたそうだから――あ、だからといって、従妹やはとこという可能性はあるのか。


昔、家族が邪険に扱ったのを申し訳なく思った女性が現れ、流夜くんに詫びに来た、とか。


それは何とかギリギリ、筋を通せる話かもしれない。


「………」
 

だめだ。それでもやっぱり嫌だ。


そんな相手なら教えておいてほしかった。


たとえば名前のつく場所にいる人なら――
 

何を莫迦(ばか)なことを。
 

流夜くんが私の存在を周囲に打ち明けられないのは、紛れもなくお互いの立場の所為なのに……。