手は伸びた。


けれど寸前で止まる。


指が、くっと折れて、触れらなかった。


振動を続ける機体。出なければ――一度出なかったくらいでは、タイミングが悪かったかと深くは考えないだろう。


私だって年中流夜くんの連絡を受けられるわけではなかった。


今は、心的な問題でそれが叶わなかった。
 

流夜くんの恋人だったという、見知らぬ人たちに妬いたこともある。


どうして自分は流夜くんに釣り合う年齢でなかったのかと嘆いたことも。


そうすれば、隠し事などさせずに堂々と寄り添っていられたものを。


――過去の人たちとは、流夜くんの傍らにいて、何ら批判も浴びない立ち位置だったのだろう。


私は違う。


九つも年が離れていて、更に今は同じ学校の生徒と教師。誰ともなしに打ち明けられる相手ではない。


それでも流夜くんは、三年待つと言ってくれたのに。


――私が卒業したら、一番に攫いにいくと。