「降渡」


「あ、来てくれたんだー」


《白》の隅のカウンター席で、思わず顔がほころんだ。


俺は先日、ここで大喧嘩を披露した絆を待っていた。


絆は難しい顔をしている。龍さんに頭を下げてから、俺の隣に座った。


「仕事はいいの? 不良探偵」


「いや、絆まであいつらに影響受けなくていいから。ほんと真面目にやってるから」


「あんたが真面目なのは知ってるわよ。……そこでにやけるからツラの分台無しなのよ」


「ごめんなー。でも、咲桜ちゃんの名前出して来てくれるとは思わなかった」


「そりゃ、在義様の一人娘だもの。在義様の食事全般を握ってる子よ? なんかそれだけですごい子じゃない」


「うん、絆って俺ら以上の在義さん信者だよな」


「そんな子に――咲桜ちゃんに、何があったの? わたしが聞いてもいいの?」


「なんてゆーかさー。……絆、俺がネクタイしてないの、正直最初どう思った?」