「さっき女すきって言ってたろうが」
 

若干声が恨めしくなるのはゆるしてほしい。


嫉妬真っ最中なのだから。


「それは――憧れ、かな? 皆さんの中に、私にはない綺麗なものが、たーくさん、あるから。……流夜くんのことは、世界でひとりだけ、結婚したい意味の、すき」
 

ですよ? 


咲桜も、さすがに俺の気分を害してしまったと思ったのか、そう付け足した。
 

なんなんだこの可愛い生物は。


また抱き寄せた。するといつもは困惑する咲桜が珍しく、すぐに抱き付き返して来た。


「………なあ、咲桜」


「ん?」


「………」
 

さっきのテンションどこ行ったと思うほど、今は穏やかな咲桜だ。


「……そういや、絆に電話するのか?」


「へ? なんで?」


「言ってたろ、俺に不埒な真似されたら連絡しろって」


「え? ………な、なんですきな人にキスされてそんな連絡するの!」
 

泡喰った咲桜は、それを愉快そうに眺める俺を見て閉口した。