「華取咲桜。咲桜、こっちが天科恋(あましな れん)さん。旧姓は猫柳恋(ねこやなぎ れん)」
「はじめまして! えと、天科さん? 猫柳さん? どちらでお呼びすれば――」
颯爽とカウンターを出て来た恋さんは、優美な動作で咲桜の右手を取った。
「わずらわせてすまない、お嬢さん。恋と呼んでくれ。ああ、もう流夜のものだというのが悔しいくらいだ。流夜より先に貴女に逢っていたかった」
「………」
三秒ほど遅れて、咲桜が顔を真赤にさせた。
あー、気ぃ浮つかせた。
それを確認して、堂々とネタばらしを決行する。
「咲桜。浮気しないんじゃなかったっけ?」
「え⁉ 浮気なんてしてないよ⁉ あれ⁉ 流夜くん以外の人に照れるわけないのに!」
かなり慌てている。
その理由は、俺の推測通りだろうか。