蒼さんが丁寧にコーヒーを淹れるのを眺める。
流夜くんはそれには興味なさそうに蒼さんに問う。
「喧嘩じゃねえよ。閃(せん)のこととか、色々。一番は恋が未だに剣さんとこ行くのに無断で邸(いえ)抜けるからどうにかしろって文句言われた。痴話喧嘩まで面倒見切れねえよ」
「違いない」
流夜くんは楽しそうに肩を揺する。
あましなさん、ってたぶん、天科グループの人だよね?
そもそも、流夜くんと蒼さんってどういう知り合いなんだろう……。
「あの……蒼さん、最初から私のこと知ってたみたいですけど、もしかして父さんもお知り合いですか……?」
私を流夜くんの生徒だと言った。
だとしたら、在義父さん軽油のセンもある。
「父さん? いや、流夜が赴任した学校だから、ちょっと生徒を調べさせてもらっただけだ。遙音もいたしな。華取さんのお父さんは、たぶん知らないと思うけど……」
「在義さんだよ」
流夜くんに言われて、蒼さんは何かを思い出すように中空を見つめた。
五秒ほど。
「……ああ、県警の?」



