これ以上咲桜の女性賛美を聞きたくない。


こいつ、友達のことを天使とか思ってのか……。


桃子さんとのことは聞いたが、咲桜の生育過程に他になにかありそうな気がしてしまう。


例えばお隣とか。
 

強く抱きしめて、咲桜から力が抜けた頃、ようやく離した。


「うー……」


こてん、と俺の肩に咲桜の額が乗った。


「ったく……なんで女相手に妬かなきゃいけねんだ……」
 

ぶつぶつと呟く。本音だ。


「りゅうやくん……?」
 

聞こえたのか、咲桜が不思議そうな声音で呼んで来た。


「なんでもない。咲桜のマザコンはぶっ飛んだ方向にいったなーと」
 

咲桜の意識を自分に向けられたようなので、子どもにするように背中を撫でる。


「……わたしが好きなのは、流夜くんだけですよ?」


「………」
 

………やられた。
 

悔しいので反論してみる。