「理音(りおん)ー?」

幼い少女は、一緒に遊んでいた筈の幼なじみを探す。

「理音どこ?」

「ここ」

「あ!理音!」

砂場の向こうにある生け垣から、栗色の髪の少年が出てきた。

「どこに行ってたの?」

「これ、見つけたから花音(かおん)にあげようと思って」

理音と呼ばれた少年は、花音と呼んだ少女に、白い花の指輪を差し出す。

「わ!ありがと!」

嬉しそうに受けとる少女に、理音は小さく笑う。

理音と花音。

同じ顔をし、名字も同じ。生まれた日も一緒で血液型も同じ。

けれども、二人は赤の他人だった。

「理音に花冠作ってあげる!」

「ううん。俺は花音が側にいればいいから」

「?そう?」

理音の言葉に、花音は首を傾げる。

「うん。……ねぇ、花音。前世って知ってる?」

「ううん。何それ?」

「………知らないなら知らないままでいいよ」

「えー?何で?」

不満そうに頬を膨らます花音の頭を、理音はよしよしと撫でる。

(知らなくていいんだ。君は)

理音は赤く染まる空を見上げる。

(俺は罪を償うために生まれたんだ)

物心ついた時から、理音は不思議な夢を見ていた。それが何なのかは良く分かっていなかったが。

(花音を、生まれる前の君を見殺しにした・・・・だから、罰を受けなきゃいけないんだ)

「理音?」

「行こう」

理音は花音に手を差し出す。

「うん!」

炎のように赤い太陽が照らす町を、二人は手を繋いで歩いていったのだった。