神羅は涙で目を真っ赤にしながら自室に籠もっていた。
御簾をしっかり下げて誰も入れないようにして、女房達も全て部屋に下がらせて、ひとり黎を想って泣いていた。
――あんなにもあっけらかんと嫁の存在を明かすのは、自分にはまったく気がない証。
あくまで自分を食うために敵から守り、この身体に触れて味見しているだけなのだろう。
もう何度も口付けを交わし合って、もしかしたら少しは自分のことを好きなのだろうかと誤解してしまったことが腹立たしく、実際もう会いに来ないでほしいと強く思った。
だがそれを口にした時の黎の表情――
心から傷ついて途方に暮れている表情をされて、もう一度同じ言葉を紡ぐことができなかった。
せめて数日――数日空けてくれればきっと立ち直っていつものように接することができるはず。
「神羅様、よろしいですか」
「業平…なんでしょうか、私は少し気分が悪くて…」
「すぐ済みます。失礼いたします」
部屋にやって来たのは自分を帝として推してその座に座らせた関白の業平だった。
手に薬湯を持ち、一切部屋から出ずに籠もり切りの神羅を心配してやって来た聡明な男は、すでに神羅と謎の男――いや、妖とただならぬ関係になりかけているのを雰囲気で悟っていた。
薬湯を神羅に渡してそれを一口飲んだのを見て切り出した。
「一体何が起きたのか私に教えては頂けないでしょうか」
「…業平、これは私の問題なのです。大丈夫です、ちゃんと解決させますから」
「…神羅様」
膝の上で強張っていた手をそっと握られて、思わずそれを払ってしまった神羅は、はっとして業平に頭を下げた。
「ごめんなさい、しばらく放っておいて。業平…心配してくれてありがとう」
「いえ、臣下として当然のことです。失礼いたします」
業平が去ると、また黎を想ってしまって思いきり両手で顔を叩いた。
誰かのものである男を好きになってはいけない。
「心を強く持たなければ…。でも…今日だけは…」
身体を丸めて畳に突っ伏して、失恋して痛む心を抱えて声を殺して泣き続けた。
御簾をしっかり下げて誰も入れないようにして、女房達も全て部屋に下がらせて、ひとり黎を想って泣いていた。
――あんなにもあっけらかんと嫁の存在を明かすのは、自分にはまったく気がない証。
あくまで自分を食うために敵から守り、この身体に触れて味見しているだけなのだろう。
もう何度も口付けを交わし合って、もしかしたら少しは自分のことを好きなのだろうかと誤解してしまったことが腹立たしく、実際もう会いに来ないでほしいと強く思った。
だがそれを口にした時の黎の表情――
心から傷ついて途方に暮れている表情をされて、もう一度同じ言葉を紡ぐことができなかった。
せめて数日――数日空けてくれればきっと立ち直っていつものように接することができるはず。
「神羅様、よろしいですか」
「業平…なんでしょうか、私は少し気分が悪くて…」
「すぐ済みます。失礼いたします」
部屋にやって来たのは自分を帝として推してその座に座らせた関白の業平だった。
手に薬湯を持ち、一切部屋から出ずに籠もり切りの神羅を心配してやって来た聡明な男は、すでに神羅と謎の男――いや、妖とただならぬ関係になりかけているのを雰囲気で悟っていた。
薬湯を神羅に渡してそれを一口飲んだのを見て切り出した。
「一体何が起きたのか私に教えては頂けないでしょうか」
「…業平、これは私の問題なのです。大丈夫です、ちゃんと解決させますから」
「…神羅様」
膝の上で強張っていた手をそっと握られて、思わずそれを払ってしまった神羅は、はっとして業平に頭を下げた。
「ごめんなさい、しばらく放っておいて。業平…心配してくれてありがとう」
「いえ、臣下として当然のことです。失礼いたします」
業平が去ると、また黎を想ってしまって思いきり両手で顔を叩いた。
誰かのものである男を好きになってはいけない。
「心を強く持たなければ…。でも…今日だけは…」
身体を丸めて畳に突っ伏して、失恋して痛む心を抱えて声を殺して泣き続けた。

