千一夜物語

翌朝目覚めた黎は、隣で胸に頬を寄せて眠っている神羅を見てぼうっとしながら考えた。

もしかして…抱いてしまったのだろうか?

上半身は裸だし、その大きくて柔らかそうな胸を見た黎は牙が疼きながらも神羅にしっかり布団を着せて御所を発った。


「もし抱いてしまっていたのなら惜しいことをしたな。何も覚えてない…」


確か昨晩は澪の件でいらいらしながら御所に来て神羅に少し慰められて少し触って一緒に寝た気がする。

気を許して敬語をやめた神羅の態度がなんだか嬉しくて――澪の件でもやもやしたものが晴れた。


「やるな、あいつ」


すっきりした気分になった黎が浮浪町の屋敷に戻ると、庭にはすでに牙たちが到着していた。

そして屋敷の周辺には、巨大な赤鬼と青鬼の姿を一目見ようと集まってきた住人たち。


「お前たち早かったな」


「赤と青がこん棒で波をかき分けてくれたのと、女狐が風を起こしてものすげえ強風に乗って来れたから早く着いた!で、黎様はどこに行ってたんだ?」


労ってほしくてすり寄って来た子狐姿の玉藻を抱っこして縁側に座って撫で回していると、牙がすっと隣に座って首を傾げた。


「遠野の嬢ちゃんは?」


「…嫁に出されたらしい。俺が行った時はすでに居なかった」


「へっ!?そこんとこ詳しく!」


言葉少なく端的に語ると、牙は足をぶらぶらさせながらさらに首の角度を深くした。


「身分が高い鬼族って…黎様んとこ以外どこがあるっけ?」


「あるには結構沢山ある。年頃の男が居る家もいくつかある。しらみつぶしにあたるには時間がかかりそうだ」


「それって奪いに行くってこと?黎様の父ちゃんすんげえ怒るんじゃ…」


「もちろん問題になるだろうな。…少し調べる必要がある」


御所で熟睡できたため少し時間ができた黎は、青と赤の前に立って腰に手をあてると見上げて町の方を指した。


「案内してやるからついて来い」


いい監視役が加入したことで、浮浪町はますます発展することとなる。