千一夜物語

一旦は帰ると言ったものの、どこか神羅が寂しそうな表情をしたような気がして、少し考えた。

牙たちは海路で戻って来るためまだ着かない。

屋敷に仲間は居るが、神羅がまたしゅんとしたような気がして、神社の扉を開いて御所の方を指した。


「今夜は泊まっていく。いいか?」


「!それは…構いませんが…」


「嫌がるお前を抱く気はない。大人しく抱き枕になっていろ」


――つまり黎と共に床に入って寝れる…

とても嬉しかったがなんとか小難しい表情を作ってそれをきれいに隠した神羅は、黎の脇をすり抜けて裸足のまま御所の自室へ向かった。


「まさか一緒に床に入るつもりなのですか?」


「それはもちろんそうだろう。固い畳の上に寝たいのか?」


「…今夜だけですよ」


するとひょいっと抱き上げられて驚くと、黎は顔を寄せて冷淡な美貌に笑みを浮かべた。


「しかしお前の気性や顔は鬼族に近いな。だからこんなに気を許してしまうのか」


「わ…私に気を許しているのですか?」


「そうだとも、俺がこんなに人に干渉することはない。まあ、鬼族でも鬼らしくない顔をしている女も居るが……いや、この話はやめよう」


黎が他の女の話をしようとしたため、少しいらっとしてしまった神羅は俯いてその嫉妬が滲んだ表情を隠した。

だが黎は神羅の耳に噛みついて顔を上げさせると、不服そうに唇を尖らせた。


「顔が見えないじゃないか」


「お主は…私の顔が好きなのですか?」


「さっきから質問ばかりだな。お前の顔は好みだ。だからこそ抱いて食おうとしてるんじゃないか」


「…その鬼らしくない女子の顔も好きなのでは?」


「……その話はやめろ。お前は俺に集中していればいい」


御所に着くなり床に連れ込まれて乱暴に投げ出された。

着替えの浴衣を投げられて受け取ると、黎、にっこり。


「さあ、見ていてやるから早く着替えろ」


平然とそう言って、神羅を凍りつかせた。