近衛兵たちは、黎の正体を知った。
黎は妖であり、鬼だ。
だが――同時に神羅を助けて、神羅が黎に身を寄せて信頼しきっている様を見ると、あながち悪い妖ではないのかもしれないと思った。
元々口が堅く身元も確かな者らで構成されているため、黎の正体を知っても口外しないと皆でその場で話し合って、神羅に駆け寄って膝を折った。
「帝、ご無事ですか?」
「ええありがとう、私は大丈夫です。…今見たことは…」
「口外いたしません。その者の言うように早く御所へお戻り下さい」
「ありがとう…」
半分腰が砕けかけていた神羅の手を引っ張って部屋へ上がった黎は、御簾を下げた後――いつの間にか手元に戻って来ていた天叢雲をぞんざいに畳に投げ捨ててどすんと座った。
「ああ全く腹立たしい。…お前も早く寝ろ」
「黎…土蜘蛛が言った話は本当ですか?」
「ひとりの女に執着、という所か?それは俺じゃなく俺の祖先の話だ。ああむかつく」
「あなたは鬼で…由緒ある家の者なのですね?」
「ああ、家柄だけは立派だな。俺の話はいいから寝ろ」
「寝れません。興奮して…怖くて…」
震える指を擦ってなんとか落ち着かせようとしている神羅を手招きして隣に座らせた黎は、運ばせていた酒の入った徳利をそのままぐいっと煽って飲むと、神羅に手渡した。
「飲んで忘れろ。ああいうのがこれからも続々来るぞ。だから今すぐ武器を作るのをやめ…」
「やめませんよ。人にも身を護る手段が必要なのですから」
黎と同じように酒を煽って飲むと、度の強さにむせて涙目になり、黎にふっと笑われた。
「酔っ払って俺を襲うなよ。いや、襲ってもいいが、今は気が立っているから優しくできない」
「な…っ、この助平!誰が襲いますか!」
その意気だ、と小声で囁いて、少しだけむかつきが収まって徳利を奪い返してまた飲んだ。
黎は妖であり、鬼だ。
だが――同時に神羅を助けて、神羅が黎に身を寄せて信頼しきっている様を見ると、あながち悪い妖ではないのかもしれないと思った。
元々口が堅く身元も確かな者らで構成されているため、黎の正体を知っても口外しないと皆でその場で話し合って、神羅に駆け寄って膝を折った。
「帝、ご無事ですか?」
「ええありがとう、私は大丈夫です。…今見たことは…」
「口外いたしません。その者の言うように早く御所へお戻り下さい」
「ありがとう…」
半分腰が砕けかけていた神羅の手を引っ張って部屋へ上がった黎は、御簾を下げた後――いつの間にか手元に戻って来ていた天叢雲をぞんざいに畳に投げ捨ててどすんと座った。
「ああ全く腹立たしい。…お前も早く寝ろ」
「黎…土蜘蛛が言った話は本当ですか?」
「ひとりの女に執着、という所か?それは俺じゃなく俺の祖先の話だ。ああむかつく」
「あなたは鬼で…由緒ある家の者なのですね?」
「ああ、家柄だけは立派だな。俺の話はいいから寝ろ」
「寝れません。興奮して…怖くて…」
震える指を擦ってなんとか落ち着かせようとしている神羅を手招きして隣に座らせた黎は、運ばせていた酒の入った徳利をそのままぐいっと煽って飲むと、神羅に手渡した。
「飲んで忘れろ。ああいうのがこれからも続々来るぞ。だから今すぐ武器を作るのをやめ…」
「やめませんよ。人にも身を護る手段が必要なのですから」
黎と同じように酒を煽って飲むと、度の強さにむせて涙目になり、黎にふっと笑われた。
「酔っ払って俺を襲うなよ。いや、襲ってもいいが、今は気が立っているから優しくできない」
「な…っ、この助平!誰が襲いますか!」
その意気だ、と小声で囁いて、少しだけむかつきが収まって徳利を奪い返してまた飲んだ。

