翌朝早速屋敷を出た黎は、浮浪町の上空を飛んで回って住人たちが鍬や鋤を手に畑仕事に従事する姿を見て満足しながら御所に向かった。
恐らく陰陽師が張ったと思しき結界はとてもみすぼらしいもので、難なくまた侵入して御所へ向かうと、勝手に拝借していた夜叉の仮面を被って素顔を隠した。
さすがに素顔でいると人知を超えた美貌から人ではないと知られる可能性があっての判断だが、それを被っていればとりあえず見回りをしている近衛兵たちには胡散臭がられながらも咎められることはなかった。
「これは便利だ。あれが来るまで寛がせてもらおう」
勝手に神社内へ入って寝転がってうたた寝をしていると、しばらくしてから神羅がやって来て黎を見て足を止めた。
神官衣ではなく御引直衣という普段着を身に纏った神羅は、黎を避けて回り込んで祭壇の前に座ると、祈りを捧げて目を閉じた。
「あれから襲われたりしていないだろうな?」
寝ているのかと思っていた黎に話しかけられて振り返った神羅は、横向きに頬杖を突いてにやついている黎を冷たい目で見つめた。
「ここには多くの陰陽師や近衛兵が詰めていますから大丈夫です」
「あんなちんけな結界あってもなくても一緒だぞ。いっそのこと俺が張り直してやろうか」
「そんなことができるのですか?」
「対価は?」
また対価を求められてぷいっと顔を逸らしたが、いつの間にか起き上がって首に手を回されてぞくりと身が震えた。
「身が少ないからもうちょっと太れ」
「質素な食事を心がけていますので」
ふんと鼻を鳴らした黎は、なおも神羅の首を長い指で撫でながら耳元で囁いた。
「用心棒というのはお前の後をどこまでも追いかけていくのが仕事だ。お前が朝廷の御簾越しで裁可をしている間にも傍に居て見張るからな」
「私を見張るのではなくて、私を狙う妖に心血を注いで下さい」
「両方してやる。だから対価…」
「行きますよ」
無視されたが神羅を獲物と定めている黎は懲りることなく首筋から頬にかけてまた指でなぞって舌なめずり。
恐らく陰陽師が張ったと思しき結界はとてもみすぼらしいもので、難なくまた侵入して御所へ向かうと、勝手に拝借していた夜叉の仮面を被って素顔を隠した。
さすがに素顔でいると人知を超えた美貌から人ではないと知られる可能性があっての判断だが、それを被っていればとりあえず見回りをしている近衛兵たちには胡散臭がられながらも咎められることはなかった。
「これは便利だ。あれが来るまで寛がせてもらおう」
勝手に神社内へ入って寝転がってうたた寝をしていると、しばらくしてから神羅がやって来て黎を見て足を止めた。
神官衣ではなく御引直衣という普段着を身に纏った神羅は、黎を避けて回り込んで祭壇の前に座ると、祈りを捧げて目を閉じた。
「あれから襲われたりしていないだろうな?」
寝ているのかと思っていた黎に話しかけられて振り返った神羅は、横向きに頬杖を突いてにやついている黎を冷たい目で見つめた。
「ここには多くの陰陽師や近衛兵が詰めていますから大丈夫です」
「あんなちんけな結界あってもなくても一緒だぞ。いっそのこと俺が張り直してやろうか」
「そんなことができるのですか?」
「対価は?」
また対価を求められてぷいっと顔を逸らしたが、いつの間にか起き上がって首に手を回されてぞくりと身が震えた。
「身が少ないからもうちょっと太れ」
「質素な食事を心がけていますので」
ふんと鼻を鳴らした黎は、なおも神羅の首を長い指で撫でながら耳元で囁いた。
「用心棒というのはお前の後をどこまでも追いかけていくのが仕事だ。お前が朝廷の御簾越しで裁可をしている間にも傍に居て見張るからな」
「私を見張るのではなくて、私を狙う妖に心血を注いで下さい」
「両方してやる。だから対価…」
「行きますよ」
無視されたが神羅を獲物と定めている黎は懲りることなく首筋から頬にかけてまた指でなぞって舌なめずり。

