深夜近くに目が覚めた神羅は、最初に黎の不安げな顔が見えて頬を緩めた。
「黎…百鬼夜行は…どうしたの…?」
「そんなもの行かなくてもいい。神羅…どこか痛いところはないか?」
「大丈夫…。ごめんなさいね、心配をかけて…」
「いつから悪かった?何故霊薬を飲まなかったんだ?飲んでいれば…きっと…」
「黎…これは自然なことなのよ。私は最初から最後まで、人で在りたい。澪さんも…ごめんなさいね、私、先に逝くわ」
澪は神羅の手をしっかり握って泣きそうになるのを必死に堪えながら首を振った。
「置いていかないで、神羅ちゃん…。私たちまだこれからだよ…?やだ…お願い…」
――もう目も見えなくなりかけていた。
神羅は手を伸ばして名を呼んだ。
伝えなくては、と思ったから。
「桂…桂は…居る…?」
「母様、ここに」
「少しふたりになりたいわ。黎…お願い」
もう先が長くない。
一瞬でも目を離したくなくて傍に居たいのに、そう神羅に懇願されるといやだと我が儘を言えない黎は、澪の腕を取って立たせると、無言で外に出た。
「桂…母様はもう駄目です。だから私の話を聞いて」
「母様…はい…」
「桂…お主は愛した者と必ず夫婦になりなさい。それと、子はひとりしか恵まれません。だからその時は、ふたり目のお嫁さんを選んで…三人で仲睦まじく…私と…黎と…澪さんのように仲良く暮らしなさい…」
――子はひとりしか恵まれない――
そう聞いた途端、桂は衝撃を受けて絶句しながらも、神羅の手を離さなかった。
「そんな…母様…知りませんでした…」
「うちの宿命なのよ。桂…おぬしなら、大丈夫。お祖父様たちに認められて当主になりなさい。それだけが、母の願いです」
「…はい、分かりました…。母様…本当に逝ってしまうんですか…?」
「そうね…。その時は…黎と澪さんに…傍に居てほしいわ…」
そう言ってまた眠りに落ちた。
桂は部屋の外で待っていたふたりを招き入れて、神羅を見守った。
神羅の言葉を反芻しながら、見守り続けた。
「黎…百鬼夜行は…どうしたの…?」
「そんなもの行かなくてもいい。神羅…どこか痛いところはないか?」
「大丈夫…。ごめんなさいね、心配をかけて…」
「いつから悪かった?何故霊薬を飲まなかったんだ?飲んでいれば…きっと…」
「黎…これは自然なことなのよ。私は最初から最後まで、人で在りたい。澪さんも…ごめんなさいね、私、先に逝くわ」
澪は神羅の手をしっかり握って泣きそうになるのを必死に堪えながら首を振った。
「置いていかないで、神羅ちゃん…。私たちまだこれからだよ…?やだ…お願い…」
――もう目も見えなくなりかけていた。
神羅は手を伸ばして名を呼んだ。
伝えなくては、と思ったから。
「桂…桂は…居る…?」
「母様、ここに」
「少しふたりになりたいわ。黎…お願い」
もう先が長くない。
一瞬でも目を離したくなくて傍に居たいのに、そう神羅に懇願されるといやだと我が儘を言えない黎は、澪の腕を取って立たせると、無言で外に出た。
「桂…母様はもう駄目です。だから私の話を聞いて」
「母様…はい…」
「桂…お主は愛した者と必ず夫婦になりなさい。それと、子はひとりしか恵まれません。だからその時は、ふたり目のお嫁さんを選んで…三人で仲睦まじく…私と…黎と…澪さんのように仲良く暮らしなさい…」
――子はひとりしか恵まれない――
そう聞いた途端、桂は衝撃を受けて絶句しながらも、神羅の手を離さなかった。
「そんな…母様…知りませんでした…」
「うちの宿命なのよ。桂…おぬしなら、大丈夫。お祖父様たちに認められて当主になりなさい。それだけが、母の願いです」
「…はい、分かりました…。母様…本当に逝ってしまうんですか…?」
「そうね…。その時は…黎と澪さんに…傍に居てほしいわ…」
そう言ってまた眠りに落ちた。
桂は部屋の外で待っていたふたりを招き入れて、神羅を見守った。
神羅の言葉を反芻しながら、見守り続けた。

