黎が風呂から上がって部屋に戻ると、澪と神羅は床に入って眠ってしまっていた。


なんと拍子抜けした初夜よ――


思わず笑みが漏れた黎は、桂の近くに火鉢を近付けてやって床に入り、真ん中に身を横たえた。


右を向けば神羅、左を向けば澪――

夢に見た光景だったが、神羅は繊細な性格のため、恐らくこうして三人で眠ることはないだろうと思うと、今夜を大切にしなければと思ってふたりの寝顔をずっと見ていた。


桂は人と妖の間に産まれた稀有な子――

両者の懸け橋となるにはうってつけの子だと思うし、その目にはすでに才気あふれる光が瞬いている。

この子を産んでくれた神羅には感謝してもしきれないし、一緒に育てたいと言ってくれた澪には頭が一生上がらないだろうと思った。


「澪…神羅…」


ふたりとも顔の系統も性格も全く違うけれど、手離せない。

鬼八の封印という重たい責務を背負っている自分によくついて来てくれる覚悟をしてくれたものだな、とはにかんで、ふたりの頬を突いた。


「もし夫婦喧嘩をしたら…絶対俺が負けるな」


何せ二対一――分が悪い。

想像するとおかしくなって笑っていると、夢現に神羅が手を握ってきた。


…追いかけ続けてようやく傍に来る決意をしてくれた神羅の短い生を、より濃密に…より面白おかしく生きてゆくために努力しなければ。


「こんなにどうしようもなくなったのは、どうしてだろうな…」


本当は理由は分かっていたが、それはもう口にはしたくない。


「愛している…」


あまり面と向かって口に出して言えないけれど、愛している。


桂を入れて四人で、楽しく共に生きてゆこう。