千一夜物語

黎が戻って来た日から続々と文が届くようになった。


妖が各地で人を襲って被害を出している内容が事細かに書かれてあり、その文に目を通しながら黎と牙と玉藻の前で優先度をつけて並べ替えた。

そうしているうちに黎と契約を結んだ百鬼たちも続々と到着して地盤が固まったことを確信した黎は、陽が落ちた頃庭に彼らを集めてきらきらした目で見つめてくる百鬼たちに笑みを向けた。


「お前たち、よく来てくれた。今後は俺が課した制約を侵さぬよう共に走ってくれ」


「応!」


轟々と上がる声に目を細めた黎は、庭に下りて手を伸ばす百鬼たちの肩を叩いたり声をかけたりして友好を図りながら空を見上げた。


――今日から自分は妖側の敵となる。

人に脅威と恐怖を与えてその身を食ってしまう妖を制裁し、自身もまた命を狙われることを覚悟しつつ先頭に立って彼らを率いる――


心休まる日々は、もうやって来ない。


人の女を愛したばかりに――

今まで意味もなく人を食ってきた自身に罰を課し、今日から空を行く。


「玉藻と牙どちらかを交互に連れて行き、残った方は屋敷の留守を頼む。澪を守れ」


「承知。ですが主さま…あなたの休息はどうなさるのですか?」


「俺に休息なんか必要ない。朝方戻って来て少し眠れば疲れなどすぐ取れる」


「そう…ですか。主さま、無理はなさいませんように」


この日留守を任せた玉藻の前の頭を撫でた黎は、またきっと空を見上げて命を待っている百鬼たちに声をかけた。


「皆、行こう」


「応!」


百鬼夜行が始まる。

人と妖の縁を体現する百鬼夜行が、空を行く。