千一夜物語

鬼族からの協力を受けることができた黎は、その日牙と共に実家に泊まった。

母や二番目の父の妻から盛大に歓迎され、獣型の妖たちに取り囲まれた黎は、酒を口に運びつつ父に何通もの文を見せた。


「なんだそれは?」


「今俺と共に在る百鬼たちから書いてもらった。各種族へ協力を促すものだが…受け入れてもらえるだろうか」


「協力を得られないなら今日のように戦いを挑むといい。大体お前のように人と接する者は少ない。人に興味がなく戦いが好きな奴はお前に協力するだろうし、人に興味がなくとも食らうのが好きな者はお前を殺そうとするだろう」


「そんなことは重々承知だ」


「黎明…突然人と契約を交わして妖側の敵にもなりかねん立場になろうとしているのはどういうことだ?理由位教えてくれてもいいだろう?」


黎はまた神羅を思い出しそうになって強い酒を煽って飲むと、歯を食いしばりながら低い声で唸った。


「…どうしようもない状況だった。そうしなければあれは納得せず、俺は……」


言葉が詰まった黎の傍に居た牙が身体を擦りつけると、黎はふっと笑って身体を撫でてやりながら目を閉じた。


「やるべきことを見出した。鬼八の封印はちゃんとやるが、今後未来永劫…俺はこれを生業としてやっていく」


「ほう…お前だけの代では終わらせないと?まあそれもよかろう。だが孫が生まれたら顔を見せに来い。それが条件だ」


黎の父もまた変わり者として有名だったが、仲違いをして家を飛び出た黎は、理由を厳しく問い詰めず受け入れてくれた父に頭を下げた。


「我が儘な息子ですまない」


「なに、子が親に我が儘を言うのは当然だ。だが黎明よ、お前の行く道は厳しく途方もなくつらいものだ。やれるか?」


「…やれる。やらなければならない」


――それから数日間、黎は各種族の集落を回り、戦いに明け暮れた。

そうして協力を取り付けて、黎の元にはどんどん共感する妖が増えてゆくことになる。