神羅と交わした契約の内容には、橋を隔ててこちら側に罪人を集めてこれ以上罪を犯させずに改心を促し、第二世代が生まれると罪を犯さずに成人になった時浮浪町から出れるというものが記されていた。
よって現在浮浪町側で汗水流して働いている者たちを集めた黎は事情を話し、町を出たい者には金を渡すから出て行くようにと促した。
だが住人たちのほぼ全員が出て行かないと言い、黎の支配下で妖から守ってもらえるのなら何も言うことはないと言ってからから笑った。
戸籍を作る関係で浮浪町と朝廷の間を行き来する者が必要になり、伊能を選出した黎は、商人としての才を遺憾なく発揮する伊能を信じて文を託した。
「お前を調停人に指名する。神羅…帝と直接会って話せるはずだ。必ず門番には浮浪町からの使者だと告げて取り成してもらえ」
「お任せ下さい」
「あと浮浪町という名は好きじゃない。よって橋を幽玄橋と命名し、町を幽玄町とする。橋を行き来する者がないように赤鬼と青鬼を橋の真ん中に立たせる。それも文にしたためてあるから、帝に渡して来い」
――自分は神羅に会えないのに、伊能は会うことができる――
未練がましくそう思ってしまった黎は、正装した伊能に文を託して自室に籠もった。
黎が帝――神羅とただならぬ関係にあり、だが関係を断ったことは伊能も知っていた。
託された文は必ず帝に直接渡すと強く胸の中で黎に誓い、牛車に乗って幽玄橋を渡り、朝廷へ悠々と乗り込んだ。
神羅は黎と交わした契約を実行するため、朝廷や役人たちに妖と手を結ぶことを伝えており、朝廷は紛糾していた。
しかもその状況で妖側の調停人と名乗る男が現れたため、真面目が取り柄の伊能が淡々と帝に会いたいと告げると、しばらく待たされた後黎の言うように御所の奥深くへ通された。
「…顔を上げなさい」
「はっ」
袖を払って顔を上げた伊能は、御簾越しに微かに見える神羅をまっすぐ見つめた。
黎が救い出し、治療を施し、匿った女――
あんなにも心を痛めている黎を捨てて朝廷に戻った神羅を――
伊能は、恨みながら見つめ続けた。
よって現在浮浪町側で汗水流して働いている者たちを集めた黎は事情を話し、町を出たい者には金を渡すから出て行くようにと促した。
だが住人たちのほぼ全員が出て行かないと言い、黎の支配下で妖から守ってもらえるのなら何も言うことはないと言ってからから笑った。
戸籍を作る関係で浮浪町と朝廷の間を行き来する者が必要になり、伊能を選出した黎は、商人としての才を遺憾なく発揮する伊能を信じて文を託した。
「お前を調停人に指名する。神羅…帝と直接会って話せるはずだ。必ず門番には浮浪町からの使者だと告げて取り成してもらえ」
「お任せ下さい」
「あと浮浪町という名は好きじゃない。よって橋を幽玄橋と命名し、町を幽玄町とする。橋を行き来する者がないように赤鬼と青鬼を橋の真ん中に立たせる。それも文にしたためてあるから、帝に渡して来い」
――自分は神羅に会えないのに、伊能は会うことができる――
未練がましくそう思ってしまった黎は、正装した伊能に文を託して自室に籠もった。
黎が帝――神羅とただならぬ関係にあり、だが関係を断ったことは伊能も知っていた。
託された文は必ず帝に直接渡すと強く胸の中で黎に誓い、牛車に乗って幽玄橋を渡り、朝廷へ悠々と乗り込んだ。
神羅は黎と交わした契約を実行するため、朝廷や役人たちに妖と手を結ぶことを伝えており、朝廷は紛糾していた。
しかもその状況で妖側の調停人と名乗る男が現れたため、真面目が取り柄の伊能が淡々と帝に会いたいと告げると、しばらく待たされた後黎の言うように御所の奥深くへ通された。
「…顔を上げなさい」
「はっ」
袖を払って顔を上げた伊能は、御簾越しに微かに見える神羅をまっすぐ見つめた。
黎が救い出し、治療を施し、匿った女――
あんなにも心を痛めている黎を捨てて朝廷に戻った神羅を――
伊能は、恨みながら見つめ続けた。

