神羅の顎に手を添えて上向かせた黎は、口から見える牙をちらつかせながら片膝をついて身を乗り出した。
…確かに、妖の中で人を食わなければ生きていけない者は居ない。
人を食うのはただ単に弱い物を押さえつけてその恐怖する顔や声を聞きたいがためで、味は二の次だ。
神羅が言わんとしていることは分かるし、だがそれを成し遂げるには多方面を説得する必要があり、自分は妖側にとっても仇敵となる可能性がある。
何せ妖が妖を制裁するのだから、不満はもちろん全て自分に向くのだ。
「お前は俺の立場を危うくさせるのが目的なのか?誰がそんな契約をするものか」
「黎…私はお主や澪さんを見ていて思ったのです。人に対して友好的な者も少なからず居るでしょう。それはこちら側にとっても同じです。私は…おぬしたちと出会って、妖に持っていた印象が変わりました。黎…この条件を呑んで下さい。お主なら成し遂げてくれるはずです」
「…それで俺になにか利点はあるのか?」
「お主は境界線を保つことを心がけていましたね。そうすれば互いに互いを憎むことはないと。私もそう思っているのです。ですから、考えたんです。今お主が住んでいる浮浪町に罪人を集めるので、そちらで管理して下さい。橋を封鎖して、平安町と浮浪町を住み分けさせます。二世代目の子が生まれ、成人するまでの間に罪を犯さなければ、浮浪町から出ることを許します。朝廷からしばらく生きていけるだけの報酬金を出します。そして…」
「ま、待て。俺が管理するだと!?」
さすがに慌てた声を上げた黎は、神羅の長い髪をくんと軽く引っ張って顔を近付けて睨んだ。
「何故俺がそんな面倒なことをしなければいけないんだ。絶対嫌だからな」
「黎…お主は私たち人の生き方をより良くしてくれています。少なくとも私とお主の間には繋がりがあり、互いの世界をより良いものにしようという思いがありますね。私は…私は……」
神羅はぐっと唇を噛み締めて俯いた。
…今、想いを告げなければ――もうこんな機会はやって来ない。
――心を奮い立たせて、顔を上げた。
「お主と繋がっていたいのです。死んでもなお永遠に、お主と繋がるものを…遺したいから」
…確かに、妖の中で人を食わなければ生きていけない者は居ない。
人を食うのはただ単に弱い物を押さえつけてその恐怖する顔や声を聞きたいがためで、味は二の次だ。
神羅が言わんとしていることは分かるし、だがそれを成し遂げるには多方面を説得する必要があり、自分は妖側にとっても仇敵となる可能性がある。
何せ妖が妖を制裁するのだから、不満はもちろん全て自分に向くのだ。
「お前は俺の立場を危うくさせるのが目的なのか?誰がそんな契約をするものか」
「黎…私はお主や澪さんを見ていて思ったのです。人に対して友好的な者も少なからず居るでしょう。それはこちら側にとっても同じです。私は…おぬしたちと出会って、妖に持っていた印象が変わりました。黎…この条件を呑んで下さい。お主なら成し遂げてくれるはずです」
「…それで俺になにか利点はあるのか?」
「お主は境界線を保つことを心がけていましたね。そうすれば互いに互いを憎むことはないと。私もそう思っているのです。ですから、考えたんです。今お主が住んでいる浮浪町に罪人を集めるので、そちらで管理して下さい。橋を封鎖して、平安町と浮浪町を住み分けさせます。二世代目の子が生まれ、成人するまでの間に罪を犯さなければ、浮浪町から出ることを許します。朝廷からしばらく生きていけるだけの報酬金を出します。そして…」
「ま、待て。俺が管理するだと!?」
さすがに慌てた声を上げた黎は、神羅の長い髪をくんと軽く引っ張って顔を近付けて睨んだ。
「何故俺がそんな面倒なことをしなければいけないんだ。絶対嫌だからな」
「黎…お主は私たち人の生き方をより良くしてくれています。少なくとも私とお主の間には繋がりがあり、互いの世界をより良いものにしようという思いがありますね。私は…私は……」
神羅はぐっと唇を噛み締めて俯いた。
…今、想いを告げなければ――もうこんな機会はやって来ない。
――心を奮い立たせて、顔を上げた。
「お主と繋がっていたいのです。死んでもなお永遠に、お主と繋がるものを…遺したいから」

