湯上がりですっきりした澪が縁側に出ると、遠くの方が赤く光っていて首を傾げた。


「牙さん、あっちの方…なあに?」


「あー、あれはその辺に転がってた屍を焼いてんだ。黎様が玉藻と見に行ってるけどもうすぐ戻って来るぜ」


ようやく玉藻の前を名で呼ぶようになったのは、窮地を見事乗り切った玉藻の前を心から仲間として認めたからであり、澪は神羅が部屋に戻ったのを見届けると、縁側に座って用意していた酒をくいっと一杯やって一息ついた。


「牙さんは悪路王さんのことどう思った?」


「黎様の邪魔する奴はみーんな悪!」


「それ私の問いに対しての答えになってる?牙さんの感想を…」


「だから!黎様が嫌ってる奴はみーんな悪!黎様って基本悪口言わないんだぜ。だから黎様が嫌ってる奴は俺も嫌い!」


納得したようなそうでないような…微妙な気持ちで牙とにこにこしていると、黎が玉藻の前を伴って戻って来た。

目が合うなりふっと微笑んだ黎にどきっとした澪は、悪路王につけられた唇の痕を見られないように濃紺の羽織を着ていて、なんとなく襟元を正して俯いた。


「黎さん、お帰りなさい」


「ん。神羅はどうしている?」


「寝てると思うよ。黎さんも私を助けてくれたり神羅ちゃんを助けてくれたりで疲れてるよね?あっ、そうだ、さっき神羅ちゃんがねっ」


「澪、ちょっと話があるからお前の部屋で話をしよう」


「う、うん」


なんだかとても緊張した。

きっと話をするだけなのだと妙な期待をしてしまった自分に言い聞かせて、黎と共に部屋へ移動した。