千一夜物語

黎の仲間は明らかに獣型に偏っていた。

狐、犬、猫、鳥、猿――ふかふかの尻尾があり、耳があり、牙のように人型でも耳や尻尾のある者など様々な種族が居て部屋の外から聞こえた鳴き声の正体が分かった神羅は一様に皆からの視線を向けられて縮こまった。


「獣…ばかりですね?」


「そうだな、そう言われると多い。記憶にはあまりないんだが俺は奴らを助けたことがあるみたいで恩を感じて集まってきたという感じだ」


妖が人の領域を侵す――

ある意味黎はその領域を侵しているのだが、黎の説明によれば彼らと人を食わない約束をしているという。

もし食った場合は黎に殺されることになるらしく、黎を慕う彼らは鼻息荒く自分たちが黎を守るのだと息巻いていた。


「悪路王がこの辺りをうろうろしているようだから、もし見つけた場合はすぐ手を出さずに報告に来い。俺がこの手で必ず仕留める」


応、と声が上がり、ようやく神羅と話す機会を得た牙はにこにこ笑いながら神羅の隣に座った。


「あんたが女帝なんだなー。ふうーん、黎様好みって感じ!」


「ど…どういう意味でしょう」


「気が強そうでさ、美人でさ、従順じゃない感じのとこが!」


…褒められているのかけなされているのか分からず引きつった笑みを浮かべていると、牙のふわふわの尻尾が足元をくすぐって思わず手にとって撫でてしまった。


「黎は…良い主ですか?」


「うん!俺を助けてくれたし、しかも無償なんだぜ!妖が無償で手助けするなんてあり得ねえから!」


「私の場合は無償ではないようですが?」


「だってあんた人じゃん。黎様は最初あんたを食うつもりだったんだからそりゃ仕方ねえよ」


――人。

人と妖――何故か差別されているような気がして俯くと、黎が神羅の腕を引いてゆっくり立ち上がらせた。


「もうそろそろ休め」


「…はい」


夜が更けて今からが妖の活動期。

もっと話をしてみたかったが、きっとこの先ここに居る間はいくらでも彼らと話す機会はある――


部屋に戻って薬湯を飲み、目を閉じるとすぐに眠りに落ちた。

黎はその後神羅をあらゆるものから守るようにして包み込むように抱きしめて、目を閉じた。