千一夜物語

その日の夜は、神羅を抱きしめて眠った。

いずれは一夜を共にするという確約を得てから我慢する必要がなくなった黎は、神羅が痛がらない程度に強く抱きしめて何度も唇を求めた。

それもまた容赦なく舌を絡めて情熱的に求めたものだから――神羅はすぐぐったりしてしまって、これは調教をしないといけないと黎にこっそり決意させていた。


「黎様おはよー!」


翌朝自室から出た黎は、すぐさま牙からにやにやしながら声をかけられて、ぼんやりしながら髪をかき上げて欠伸をした。


「んん…どうした?」


「した?女帝とした!?致した!?」


「してない。一緒に眠っただけだ」


「嘘つくんじゃねええ!黎様が何もしないなんてあり得ねえし!」


ぽかっと牙の頭を拳で軽く殴った黎は、むっつりしている玉藻の前に茶を出されてそれを飲みながら、ついた寝ぐせを手で撫でていた。


「してない。だが約束はした。悪路王を殺してからということになった」


「わはっ!良かったなー!悪路王早く見つけてぶっ殺さねえと!」


雑談に興じていると、あてがわれた部屋から出て来た澪は、黎がずっと神羅と同じ部屋に居たことにもやもやしつつ隣に座った。


「黎さんおはようございます。……ずっと神羅さんと一緒に居たの?」


「ああ。あれを見張る必要があるからな。平安町から続々と荷物が届いているようだが、だいぶ買い込んだな」


「えへ、どれだけここに居るか分からないけど居させてもらう間は快適に過ごしたいなって思って」


黎の目には澪の頭に兎の耳が生えて丸い尻尾をぴこぴこ動かしているように映っていて、自然な動作で澪の頭を撫でて頬を赤くさせた。


「あの…それでね?前にちょっと話したと思うけど、ここまで護衛してくれた方が平安町にまだ居るの。だから…」


「会いに行くのなら、また牙を連れて行け。くれぐれもお転婆はしないように」


「黎さんって時々私のことを知ってる風な感じになるよね。見抜かれてる感じっ」


ぎくっとした黎は、茶を口に運びながらにこにこしている澪から視線を逸らした。


「お前は分かりやすいからな」


「許可してくれてありがとう!早速今日また平安町に行ってくるねっ」


――絡み合う糸にまだ誰も気付くことなく、日々は過ぎてゆく。