千一夜物語

今度は自ら茶を淹れて神羅の元を訪れた澪は、にこにこしながら傍に座って茶と茶菓子を見せた。


「色々お話聞かせて下さい。あ!ちょっと待って、気さくにお話したいからお互い敬語使うのはやめよ?」


「ですが私はこれが癖なので…」


「じゃあ私は敬語使わなくても大丈夫?ああ良かった、神羅ちゃんと仲良くなりたいから私のことも沢山話すし、神羅ちゃんも沢山話してね」


――神羅ちゃん、と呼ばれてなんだかくすぐったい気持ちになった神羅は、先程何が起きたのかを訊いた。


「黎と何か話してきたのですか?」


「うん、ちょっと怒って来たの。人なんか食べちゃ駄目でしょ!って」


煎餅をぱりぱり食べ始めた澪をじっと見た神羅は、茶を口に運びながら息をついた。

あの男が自分を食うのを諦めるはずがない、と。


「反論されたでしょう?あの男は私を日がな齧っては味を確かめているのですから、悪路王という妖を倒したら私を食うつもりですからね」


「うーん…うん、でもとりあえず神羅ちゃんを狙ってる妖は殺してくれるはずだから、その後のことは私に任せて。絶対神羅ちゃんを食べさせたりしないから!」


澪は明るく朗らかで、だんだん打ち解けてきた神羅は巫女をしていたこと、女帝に就くまでの出来事を黎にも話したことがないのにぺらぺら喋ってしまうほど、短時間で澪と仲良くなった。


「女の子で帝に就くって大きな決意だったよね。頑張った頑張った」


頭を撫でられた神羅が頬を赤くして俯くと、きゅんとした澪はずばっと思ったことを口にした。


「神羅ちゃんの顔って私たちによく似てるよね。鬼族だって言われても疑わないくらい鬼族らしい気の強い顔してる。逆に私は人みたいな顔してるって言われることが多いんだけど」


「黎にもよく言われます。生まれる種族を間違えたのではないかと」


「ふふっ、それ言えてる!あ、そろそろ眠った方がいいよね。沢山お話して疲れちゃったでしょ?夕方位にまたお話に来てもいい?」


「ええ、是非」


意気揚々と部屋を出た。

そして真っすぐ黎の元へ向かって、にっこり。


「黎さん、ちょっとお買い物してくるから外出許可を下さいっ」