信号は青になり、 祐希はだらっと背負ったリュックを揺らし、横断歩道を渡っていた。 「…………」 いろんなベクトルの感情が一気に押し寄せてくる。 驚きとか、ドン引きとか、クサさとか。 麻里奈さんへのうらやましさとか。 「イーッ!」 朝っぱらから妙な気持ちになったわたしは、 変なかけ声を発しながら、祐希の左肩にパンチを浴びせることしかできなかった。 「いって。なにすんだよ」 「なんとなくっ」 「なんとなくで人殴るんじゃねーよ」 「すみませーん」