「あー、華取さんが出て来たついでに。お前さ、華取さんと咲桜を引き離すような哀しい真似すんなよ? いくら咲桜に惚れてるからって」


「……出来ねーよ」
 

答える声は小さい。
 

もう、俺も遙音も親はいない。
 

咲桜と在義さんは血の繋がった親子ではない。
 

けれど。
 

だからこそ。


「……咲桜も大概ファザコンだからな。在義さんところに逃げられたら嫌だからそんなことはしないと思う。……たぶんな」


「そこは言い切ろうよ。お前咲桜のことになると自信なくすのな」


「……悪かったな」


「いーよ。やっとお前が人間に見えて来たから。じゃーな。愛妻弁当しっかり食えよ」


「………遙音」
 

睨むと、遙音は軽く笑った。