黙っていると、宮寺はくすっと笑った。


「大分大人しくなっちまったな。つまんね」
 

――その言葉がどういう意図に繋がるのか少しだけ考えた。


宮寺に垣間見えたのが、淋しさだったから。


「じゃー次は金曜日。講義の日に来るから。……逃げんなよ」


「お前から逃げる理由がない」
 

言い切ると、「相変わらず自信の塊かよ」と毒づいて、宮寺は離れて行った。
 

何となくわかったのは、何故か宮寺は学生時代のような関わりを望んでいる。


……それだけだった。
 

今も宮寺があいつに気があるのか――それならば自分のところではなく降渡の方へ行けと蹴飛ばせるのだが――それは、曖昧に宙に散ってしまった。