もう放課後。


咲桜が旧校舎まで来ることもあるから、今日は来ないように連絡しておこう。


万が一連絡が遅れて宮寺に見られたら、咲桜への説明の前に一つヤマが生じる。
 

メールにしようとして、何となく通話ボタンの方を押してしまった。あ、やべ。


『はいっ! 咲桜ですよ!』
 

……若干咲桜のテンションがおかしい気がしたが、今のところは無事なようだ。


危険はあったけど、やはり電話してよかった。


咲桜は声だけでも癒しだ。


「咲桜、すまないが今日は旧校舎に来ないで、真っ直ぐ華取の家に帰れるか?」


『うん? 何かあったの?』


「……俺の昔の知り合いのことで、少し話さなければいけないことが出来た」


『それって宮寺先生?』


「……知ってたか」
 

驚きはあまりない。


宮寺が現れたとき、咲桜も離れてはいたが廊下にいた。


話しかけて来た生徒より、咲桜にばかり意識は向いていたのも事実だ。