「おーい、離せよ神宮」
 

呼ばれて、流夜くんは引きずっていた宮寺先生の、今度は胸倉摑み上げて壁に押し付けた。……え?


「何でお前がここにいる」
 

……『神宮先生』の仮面がまるっと剥がれてしまっている。


知り合いなのかな?
 

それにしても声が怖い。


初めて聞く、低い響きだ。


吹雪さんたちに対する様子とも全く違っていて驚いた。
 

鬼気迫る様子の流夜くんに、宮寺先生はのんびりと答える。


「今度の講師、俺」


「……ちっ」
 

今度は舌打ち⁉
 

一体どうしたの。


また流夜くんが宮寺先生を引きずって歩き出したので、その先は保健室だろうと見当をつけて笑満に肯いて見せた。


校内と校外では、造りの所為で私たちの方が先につけるはずだ。
 

ショートカットして走った保健室にはまだ流夜くんたちはいなかった。


「どうしたの、咲桜ちゃん」
 

夜々さんが気付いて窓を開けてくれた。


「今、流夜くん来ると思うから、私たちがここにいるの黙っててほしいの」


「? 神宮さん? わざわざ敵の牙城の入ってこないと思うけど……」