「『神宮先生(あれ)』は、あの人が意図的に作り出した人格だ。偽モノに恋愛するなんてバカみたいじゃね?」
 

あの人の本当は咲桜のものなんだよー。


頼が投げやりに言うと、笑満は苦笑をもらした。


「大体さ、あの人優しいだけじゃないだろ。俺、記憶が飛ぶほど殴られる危機だったんだから」


「えっ、何それ」
 

私が声をあげると、夏島先輩にでも訊いてー、と、最後は寝惚けた声で言って、また突っ伏してしまった。
 

にせもの。
 

本物の、今は恋人。


「……ありがと」
 

小さな声で礼を言うと、「んー」と、頼から寝言のような返事があった。
 

笑満を見ると、微笑んでいた。頼の言葉を肯定するように。


「笑満大すきっ」
 

ぎゅうっと抱き付くと、笑満は慌てたように声をあげた。