流夜くんが、学生時代に恋人の数が多かったことは聞いている。


その人たちに嫉妬をしたのも事実。


でも、『恋愛感情を持ったのは咲桜だけだ』と宣言してくれたから、不安になることはなかった。


……今は違う。


現在進行形で、流夜くんを想っている――かもしれない人がいる。すぐそばに。


「さおー。大丈夫だよ。あの人は生徒に付け入られる隙なんて見せない」
 

いつの間に起きたのか、頼が腕に顎を載せてこちらを見上げていた。


「………」


「あの人の本性も知らないですきなんて言ってる人、気にするに値しないよ」
 

バッサリだった。


……流夜くんの本性を知らないのは仕方ない。本人が隠しているのだから。


でも、私だって知らなかった。私が惹かれたのは素の流夜くんだった。


あの子は? 

もし何らかの事情で流夜くんの素顔を知ってしまったら? ……自分みたいに、もっとすきになってしまうかもしれない。
 

頼に返事が出来ないでいると、小さくため息が聞こえた。


「咲桜。この言い方は怒られるかもしれないけど、学校でのあの人は偽モノだよ」


「―――」
 

はっとした。
 

にせもの。