「華取――さん。咲桜さん?」
 

宮司先生の一回目の講義が終わった日のことだ。


遺伝子学を主軸にした宮寺先生の講義は、進むにつれ私にはちんぷんかんぷんだったけど、笑満の興はそそったようだ。


頼は今日も眠そうで反応はないけど、このままでは終わらせない。


教師の語る以上のものを得る奴だ。


私も、わけがわからないままでは終わらせたくない。


わからなかったことが予備知識がないせいなら、復習すればいい。
 

最終授業の時間にあてられたから、下校の時間にまだ宮寺先生はいたみたいだ。


還るために降りて来た職員室のある一階で声をかけられ――名を呼ばれ、振り向いた先にいたのが宮寺琉奏先生だった。
 

え、うそ――なん、で?
 

宮寺先生と個人的な面識はない。


なのに、何で名前を呼ばれ、しかも顔まで割れている?


「あ、はい――」
 

やや警戒して、緊張した声で応えた。


「いきなりすみません。華取咲桜さん、だよね?」