朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】



「……流夜くんって天才なの? 頭いいのはわかるけど――」


「うん。傍目には凡人装ってるけどな。装ってる時点で天才確定なんだよ」
 

……頼がこんな言い方をするのは――出来るのは、頼も同種だからじゃないかな。


以前流夜くんも言っていた。


流夜くんは、頼のことを『天才』タイプ、遙音先輩を『秀才』タイプと区別していた。
 

私にとって、頼の頭の中は深淵だ。


息も出来ない水の奥底。


「まあ、その辺りは感覚の問題になんだけど。――っと、ここだっけ?」
 

頼はいつかぶち開けたドアの前を通り過ぎようとして、足を停めた。


私が肯くと、「お邪魔しまーす」と軽快にドアを開けた。
 

中にいた流夜くんはタブレット端末で何かを見ていた。


推測するに、海外の新聞だろう。


色んな世界と繋がっている人だから。