「……流夜くんって天才なの? 頭いいのはわかるけど――」
「うん。傍目には凡人装ってるけどな。装ってる時点で天才確定なんだよ」
……頼がこんな言い方をするのは――出来るのは、頼も同種だからじゃないかな。
以前流夜くんも言っていた。
流夜くんは、頼のことを『天才』タイプ、遙音先輩を『秀才』タイプと区別していた。
私にとって、頼の頭の中は深淵だ。
息も出来ない水の奥底。
「まあ、その辺りは感覚の問題になんだけど。――っと、ここだっけ?」
頼はいつかぶち開けたドアの前を通り過ぎようとして、足を停めた。
私が肯くと、「お邪魔しまーす」と軽快にドアを開けた。
中にいた流夜くんはタブレット端末で何かを見ていた。
推測するに、海外の新聞だろう。
色んな世界と繋がっている人だから。



