「………」
タチが悪いタイプの天才? どこまですっ飛んだ話をし出すんだ、こいつは。
笑満と顔を見合わせて、頼から行動している今は、動くに任せようと思った。
頼はため息まじり、どこか疲れたように、憑かれたように話す。
「バカな天才って言うのかな。惚れた女一人のために、世界の法理だって曲げられちまう人なんだ」
「……世界の法理? そんなものを曲げられるの?」
笑満が問う。
「フランス革命」
同じ音調で頼は言う。
「アメリカ独立戦争。ソ連崩壊、ベルリンの壁。世界の法理なんて時代で移ろう。近世だけでもいくつあるか――。そういったものの影に、表立たず暗躍する天才がいるもんなんだ、大体。そいつらは、世界を変えようなんて思ってない。大事に思ったもの一つを護るために起こした行動が、結果世界をひっくり返す。所謂革命によってその世界の法理は根底から覆る。『流夜くん』は、そういったタイプの危うい天才だ。――と思う」



