「咲桜ちゃん、美流子さんのこと黙ってたの、流夜を責めないであげてね」


「あー、あいつ、美流子さんのことはずっと悩んでるからなー」


「……はい」
 

責める気なんてさらさらない。


話してもらえなかったことを淋しく感じるけれど、複雑過ぎる流夜くんの立場を思えば、言える言葉もないくらいだ……。
 

お姉さん、か……。
 

私にきょうだいはいない。


在義父さんとは血の繋がりはない。


私の血縁は、亡くなった桃子母さんだけだ。


けど在義父さんが娘バカとか親バカとか言われるほど構って育ててくれたので、血縁がいないことを淋しく思ったことはない。


流夜くんは家族を殺されているけど、行方不明のお姉さんがいる。


……それだけで、私との立ち位置は随分違って見える。
 

……逢いたいよね。
 

私は『誰か』を探したことはないけれど、流夜くんは探し続けている。


だったら、背中を押して、それこそ――支えるのが私に出来ることじゃないかな。
 

今日、流夜くんはどうしてもはずせない用事があるから、と……大分悲壮な顔で言っていたのが気になる。


どんな用事かまでは教えてくれなかったけど、もし時間があったら、逢えたらいいな。


在義父さんの要求へに対応も、二人で考えなくちゃいけないし。