朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】



「………」
 

あえてそれには答えないでおいた。


咲桜の方がもっと非道い評価をしそうだったな……。


ああ、確かに似ているよ……いろいろ。


「……惚れたんだ。それだけ」
 

本当に、ただそれだけなんだ。
 

今までにない感情を、咲桜は俺に持たせた。

「お前は?」
 

当たりまえのように問い返すと、遙音は面喰った顔をした。


「え……と?」


「松生のこと、忘れてたわけじゃないんだろ?」


「当り前だろ! 一秒たりとも!」


「うっせえ」
 

また叫んだので、今度はノートで叩いた。


遙音は、悪い、と謝って座りなおす。


「笑満ちゃんは――たぶんずっと、すきだった。今になって気づいただけで」


「……よかったじゃねえか」


「うん――」
 

よかったな。
 

再びの邂逅。


出逢えても、繋がるかわからなかった過去の因縁。


それも越えて、今、松生は遙音の『彼女』、だ。