朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】



咲桜は、細く息を吐いた。


「……寿命の一秒前が、母さんの天命だったんだ」
 

……そうやって、咲桜は桃子さんとの間にケリをつけたのか。


本当、お前はどんどん強くなっていくな。


……置いて行かれないか心配になってしまう。


「私の希望なんだけど、せめて父さんの腕の中で死んだとき、母さんが泣かないでいてくれたらいいなって思う。……まだ怖くて、父さんには訊けないけど」


「そうだな――」
 

咲桜の手を握り返し、手の甲に口づけた。


咲桜が慌てたように手を引っ込めたので、そのまま離す。


「きっと、笑ってただろ。在義さんの前で泣いたりしたら大変だ」


「……だよね」
 

咲桜の笑顔。今がずっと続けばいい。


不可能な話だけどそう願ってくれるのは、素直に嬉しい。


「お前ってファザコンでマザコンなのな」
 

シンプルに複雑だ。