咲桜は、細く息を吐いた。
「……寿命の一秒前が、母さんの天命だったんだ」
……そうやって、咲桜は桃子さんとの間にケリをつけたのか。
本当、お前はどんどん強くなっていくな。
……置いて行かれないか心配になってしまう。
「私の希望なんだけど、せめて父さんの腕の中で死んだとき、母さんが泣かないでいてくれたらいいなって思う。……まだ怖くて、父さんには訊けないけど」
「そうだな――」
咲桜の手を握り返し、手の甲に口づけた。
咲桜が慌てたように手を引っ込めたので、そのまま離す。
「きっと、笑ってただろ。在義さんの前で泣いたりしたら大変だ」
「……だよね」
咲桜の笑顔。今がずっと続けばいい。
不可能な話だけどそう願ってくれるのは、素直に嬉しい。
「お前ってファザコンでマザコンなのな」
シンプルに複雑だ。



