「わかっちゃったから。すきな人に向く感情の、強さとか。すきの理由の違いとか。……未来を望んでしまえば、今を動かしたくなくなる。今に続く先が、今と同じであったらいいって思う。……でも母さんは、現実が怖かったんだと、思う。私のほっぺとかに触るとね、ほっとした顔するの。ああ、これは現実だ、みたいな。幸せな自分を、受け容れられないで、ゆるせないで、いたんじゃないかなって……思うの、今は」
言葉のように、咲桜は俺の頬に触れた。
「現実(ほんとう)」
これは、ここは本当の現実だ。
夢じゃない。幻じゃない。
俺からも、咲桜の両頬に触れた。
咲桜はくすぐったそうな顔をする。
「だから私、たぶん結構前に――流夜くんに逢ってすぐくらいに、桃子母さんのことはゆるしてたんだと思う。……身体反応は、少し残っちゃってたけど」



