「え、美流子さんのこと聞いたの?」
 

龍生さんのカフェで驚いているのは吹雪さんだった。
 

私にとって、笑満が吹雪さんや降渡さんに逢いたいと言っていた約束の果たし時だった。


吹雪に連絡を取ると、なら休日に《白》で、ということになった。
 

遙音先輩も一緒に来たのだけど、龍生さんのお手伝いにカウンターの中に行ってしまった。


家出した当初、ここで置いてもらっていた経験のある先輩なので反射神経のようだ。


「聞いたと言うか……流夜くんの寝言と言うか……」


「流夜の寝言⁉」
 

いきなりの大声に笑満の肩がびくりと跳ねた。
 

素っ頓狂な声をあげたのは、店に入って来たばかりの降渡さんだった。


戸口で目を見開いている。


「うっせーよ雲居」
 

他の客もいんだろ、と、カウンターから出てきた先輩が降渡さんの足を軽く蹴った。


「あ、わり。んで、こちらは?」


「知ってること訊くな」
 

降渡さんの問いかけに、先輩は思いっきり眉を寄せる。


「えー、礼儀上訊かないとまずいだろ?」
 

先輩に言って、降渡さんは笑満に向き直った。