天国で君が笑っている。



時間が経って、日が暮れる。青から赤、そして藍色に変わっていく空。
ぼうっと眺めていると、いつの間にか部活が終わる時間。


グラウンドから「ありがとうございましたァッ!」と大きな声が聞こえてふと我に返る。


野球部の練習が終わって、みんながグラウンドの整備や片付けを始めた。
その姿を見て慌てて帰り支度をする。
机に出していた課題のプリントや教科書を雑にかばんへ押し込むと、急いで教室を後にした。


校門前で立って待つ。
部活終わりの人たちがぞろぞろと帰って行く。


風が髪の毛を揺らす。長くなった髪の毛を無意識に耳にかけながら、私の横を通り過ぎていく人達の姿を眺めていると、可愛い男女のカップルが目を引いた。


肩と肩がくっつきあっていて、手を繋いで楽しそうに会話をしながら歩いている。
前を向きながら、でも時折り見つめ合って、微笑みあう仲睦まじいその姿に、心の中で切ない気持ちが溢れる。


なぜかはわからない。


でもたぶん、きっと、


私には手が届かないものだから……だと思う。


「なーにぼうっとしてんの?」


肩に手を置かれて、驚く。
目の前に現れた彼方に「お疲れ」と咄嗟に微笑んだ。


「蒼は?」

「あいつは先輩の練習相手してる」

「え?彼方はいいの?」

「俺は逃げてきた」


白い歯を見せてお茶目に笑う彼方。

蒼がいないということは、ふたりきりで帰れるということだ。