驚いて花崎くんを見ると頬杖をついて外を見ていた。その視線の先にいるのは、おそらく、私がついさっきまで見ていた人物と同じ。
そう思えたぐらいには、この男は油断ならない人に思えた。
「……からかわないでよ」
苦笑して、返事をする。
でも、彼はそんな私には気づかない。
「僕初めて朝霧さんを見たとき"こんな綺麗な女の子っているんだ"って思ったんだ」
……冗談にしてほしかったのに。
オブラートという言葉を知らないストレートな台詞。
「僕、本気だよ?」
「……困る」
そんな、本気出されても、困る……。
「だろうね。でも、僕も困る」
「……?」
「僕、こう見えても余命あと5年もないんだ。20歳まで生きられない」
先程と比べものにならないほどの衝撃を受ける。
──同じ、だ。私と。
息をするのを忘れる。目の前にいる彼から目を離せなくなる。
「……どうして、そんなに、平気な顔して……」
私とは対照的に穏やかな表情のまま、彼は続けて口を開いた。
「悲観的になってもしょうがないからね。だから僕は死ぬまで自分に正直にいようって決めてるんだ。後悔、しないように」
「そう、なんだ……」
無理だ。そんなの。私にはとても真似できない。
受け入れて、ポジティブになんて。
私はまだ受け入れ切れてない。
病気のことなんて忘れようと必死で、目を背けているだけ。
泣かないって誓って。
ただ目の前の夢を叶えるためだけに生きている。



