改めて教室を見渡す。
ぎこちなくも、会話を弾ませている人たち。
前からの仲なのか大笑いしてふざけ合う人たち。
色んな人がいるなかで注目を集める人物に気づく。
「ねぇ、あの人……」
「うん、すごく──」
……かっこいい。
アーモンド型の大きな目。薄く形のいい唇。高い鼻。男性としては可愛らしい印象だけれど、どこかの芸能事務所に所属していると言われても嘘だとはきっと思わない。
クラスの女の子の目がその人に向かっている。
女の子だけじゃない。男の子からも「どこ中?」と話しかけられている。
「ごめん、僕最近引っ越して来たばっかりだから……」
目の前でクラスの中心が彼に寄っていっているのがわかる。
座席表を見て彼の名前を知る。──花崎瑠衣。
「……遥香ちゃんのタイプじゃないね」
「わかる?」
だって私の好きな人アイツだよ?
無愛想で、目なんてあんなに大きくない。
切長で、印象はクール。
かと思えば野球には信じられないくらい熱い。
確かに女子からは人気あるけれど、彼とは正反対なタイプなのは間違いがない。
「そういう美乃梨ちゃんもタイプじゃないんじゃない?」
「えっ?」
「だってうちのバカ弟に惚れるぐらいだからなぁ」
「蒼くんには蒼くんのいいところがたくさんあるんだよっ?」
これまで散々美乃梨ちゃんは男見る目ないって冗談で言ってきたからか、こちらが蒼をいじる前に美乃梨ちゃんが墓穴を掘っている。



